Philosophy_Voice Vol.1
ナカシマホールディングス代表取締役社長 兼
ナカシマプロペラ代表取締役会長
中島 基善
1926年、祖父は鋳造所を創業、2年後に漁船用プロペラを造り始めた。父は第二次世界大戦後に大形プロペラを手掛け、3人の兄弟とともにナカシマの世界市場におけるシェアを伸ばす。現会長・中島基善氏と経営陣は新工場建設や海外拠点構築に大胆に投資。こうしていまや、同社は名実ともにグローバル企業へと成長している。3世代90年を貫く「ナカシマならでは」とは何なのだろう。基善氏に聞いた。
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Q1 経営者として大切にしていることは?
お客様も人、社員も人ですから、人が好きで人に関心があることは、経営者の条件だと思います。私自身、積極的に外に出て、人脈を広げています。すると、人も情報も自然と集まってくるものです。そして、進むときも退くときも、果敢に決断を下し、実行することですね。社内では、何でも言える雰囲気、絶えずチャレンジできて失敗が許される風土づくりを大事にしています。失敗は成長に欠かせないプロセスですから。
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Q2 創業以来、受け継がれてきたものとは?
鋳物職人だった祖父が伝えた技と心意気、新し物好きの負けず嫌いだった父がこだわった最先端テクノロジー、そして2人に共通する「現状に満足しない」精神、これらを受け継いではじめて、ナカシマの「ものづくり」があります。ナカシマでは、インハウスの高度な設計技術を支えるコンピューターの導入・アップグレードに積極的に投資しており、その性能は業界屈指です。ただ、設計図があれば、誰が作ってもロケットが月にたどり着くわけではない。プロペラも、優れた設計図が忠実に再現されてはじめて本来の力を発揮します。ナカシマは、最新鋭機器による加工技術と繊細な職人芸が融合した最強の製造力で、これを実現しています。こうした「ナカシマならでは」を、これからも大事にしていきます。
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Q3 一品受注生産にこだわる理由は?
実は、世界の多くのメーカーが、造型作業を標準化してシリーズ建造船のプロペラを受注し、生産を効率化する体制をとるようになっており、多種多様な一品受注に対応できるところは少なくなっています。しかし、船の用途ごとに積み荷や装備が違い、港ごとに水深が違い、航路ごとに気候が違う。船速や燃費だけでなく、環境負荷もますます重視されていく今後、一隻一隻に最適なプロペラを設計・製造できる力はこれまでよりも貴重なものになっていくと考えています。
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Q4 創業100周年に向け、ナカシマの今後は?
いまナカシマは、プロペラという「もの」を納めるだけでなく、推進性能の最適化のスペシャリストとして、船の一生に寄り添う企業へと進化しつつあります。目指すのは、世界中の船主さんはじめお客様にとって最も信頼できるパートナー。そして、世界で断トツの存在感を持つ会社になっていること。そのための改革に取り組んでいる若い世代に期待しています。